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無知の無知

・・・「NAT越えが困難」(中略)について佐藤氏は通信にTCPを使うのではなく、UDPに変更することで解決が可能ではないか、という提案をしている。また、UDPでは事実上接続数の制限がないため、速度向上にも寄与できる可能性が・・・

(続き)

・・・ええとどこから突っ込めばいいものか・・・。可能性としてはKAFの方の佐藤が想像を絶する戯けであるか、あるいは両方の佐藤が揃いも揃って虚けであるかの二択である。まあ突っ込みどころは他の段落にも散見されるが、いずれにせよそれ自体には興味はない。

気になったのはこういう(厳密に明示的でないという意味で)暗黙のうちに上り帯域を消費するアプリケーションって現代社会的にはどうなのかなあと。そもそもの間違いの始まりは、ISPの側が上り帯域を特別な操作を必要とせずに使用可能な状態で切り売りしておきながら、その上り帯域の通信が一定条件(盗聴によって特定の通信内容を同定した場合、あるいは単純に一定量を超えた場合というのが多い)を満たしたとたんに、それは違約だと主張し始めることが現代社会的に許容されていることにある。確かにアプリケーションが使う通信に係る費用はユーザーの責任でユーザーが負担するというのが一般的な商習慣であって、おそらくは契約条件にも最初からそう書いてあるのだろうけど、それが一歩間違えるとISPから契約解除の脅迫を受ける可能性があることまで含意しているとは誰も想像するまい。恐ろしいことにこれは極論ではなく事前条件から予見可能な必然であって、しかも(政治的に)悪徳と見なされるような一部のISPのみに限った話でもない。

同じことは近年ぺんぎんルーターに多く仕込まれている“いわゆるtorrent機能”にも言える。何をしているか厳密には理解していない客層にも使えるよう簡便なUIを用意した、その時点で「暗黙のうちに」の分類の方に落ちてしまう。例えばぺんぎんのLiveDVDか何かをとってきて、なんとなく忘れてそのままseedで放っておくと、ここまでは全く合法的でかつ世間的にも奨励されるべき善行であるにもかかわらず、どういうわけだかISPから一方的に契約解除の通告が飛んでくるわけだ。・・・まあここでなんとなくおいてあるものの中になんとなく出所を明らかにするべきでないものがあったりすると一転して色々とアレになるけれど。


ところでtorrent自体もいうほどよくできたシステムではないよなあ。確かに(比較的)単純な機構でそれなりのスループットを出し得るが、それは単に全ての関係者が良心的でかつ協力的なことを設計上の前提にしているからに過ぎない。しかもここでいう関係者というのはpeerの実装に限ったことではなくISP等の途中経路も含むわけで、これは前述の通り(政治的に正しい現代社会ではちっとも期待できない。それなりに成立が古くそれなりに広く浸透してしまったために世代交代が進まなくなった技術的老害の一つである。もっともおよそあらゆる技術の使い道はその内容ではなく価格によって決定されるものである以上、コストをかける気の無い分野にわざわざ実装コストを投下してまで正しい技術が使われることはやはりないのであろう。

そして書き終わってからKAFの方の佐藤は当日記的に初出ではなかったことを思い出した。だめじゃん。でもまあ表題を考える手間は省けた。まる。


追記: 記事的には並んでいるCAPCOMのGMの話の方がよほど的を得ている。かつてMoEという箱庭でMが夢見た方法論はこれとは真逆だけど、問題として認識していた部分は全く同じだったことがわかるだろう。逆に言えばここで言われていることが取り立てて新しいわけではない。MHFではこれらの問題に遭遇しないように最初から環境を整備することで回避し、一方Mは愚かにも真正面から馬鹿正直に資金投下することで対抗したのだ。しかもそれで人手が追いつかない分は、恐ろしいことに最初から商品の販売量自体を制限することで調整するつもりだったのである。この結果として採算がちっとも合わなかったのは何というか自業自得ではあるのだが、少なくとも夢の見方としては間違ってはいない。

もちろんGM業務の三分割方式は、本質的には人力テーマパークを運営する気だったMの構想それ自体とセットであって、アップデートドリブンな今時風のMMOにそのまま適用すべきものではない。しかしそれを差し引いてもなお、人力テーマパークから人力を抜き去った廃墟という実に現代的な出発点から始まったぐろいもえは、果たして何か別のものに転換できたのだろうか、と — 過去の亡霊に縛られたままの私は未だに疑問を残しているのだ。