感想

逃 げ や が っ た

（続き）

その結末自体は必要以上の不幸であるとは思うものの、それを回避しなかったのもまた本人の選択であろう。仮にその引き金に不当な外的圧力があったのだとしても、事ここに至るまで自らの責務を果たさず、遂にその全てを最終解決的に放擲したという事実は揺るがない。言うなれば咎人の末路である。

不謹慎なのは重々承知の上です。謹んでお悔やみ申し上げます。

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彼から全ての現代的通信手段を奪い去るだけの強権が発動されていたのでも無い限り、科学者としての彼はその最期の瞬間まで自らの意志で自らの責務を果たすに足る手段を持ち得ていたはずなのです。選択的な情報リークに追い詰められたという主張は一見もっともらしいけれど、もしそれだけが問題だったのであれば残りの部分を自ら公表すれば対抗できる。マスコミや政治屋どもにはともかく、少なくとも科学者に届く言葉ならばまだあったんじゃないのかと。逆に言ってそれが実質的に選択肢から外れていたと、政治的圧力に抗った際に予想される政治的失地が彼の存在意義を全否定するほどであったというなら、それはもう科学者の死ではなく単に敗退した政治的活動家の死であって、大昔の宮廷権力闘争の類と同列の事案として考えなければならない。もちろん研究するにも元手がかかっている以上、そうきっぱり割り切れる話ばかりではないんですが。