301 Moved Permanently

Moved to https://vow.g.hatena.ne.jp/vow/

警告

いろいろと権利侵害の疑われる事例が増えているようです。くれぐれもご注意ください。

(続き)

拙作ともえがー(toMoEgah)が違法行為を助長するものであるというような認識を第三者に与える行為は、日本国法に基づき著作者である当方に自動的に発生している著作者人格権(みなしを含む)のうち、名誉声望保持権の侵害に当たる可能性がありそうな気がするかもしれません。

・・・いや本当かどうか知らんけど。すべては素人考えなので、本当のところは専門家にご相談ください。


先に蛇足から片付けます。そもそも著作者人格権とは総じて著作者の意が尊重されることを保証するための制度です。同一性保持権とは著作者と改変者の間で意に衝突があった際の優先順位を定めたものであり、あらゆる改変行為を著作者の意に関係なく一律に禁止するためにあるものではありません。ついでに言うならば、たとえば実演家の技量の限界により生じてしまった改変については最初から適用除外です。つまり演奏をミスった程度でいちいち文句を言う権利なんてのは含まれていません。

条文を読んで法を読まないのは、法を守る気がないよりさらに悪質です。十分に注意してください。


さて本題。多分に道徳的な著作者人格権ではなく、主として財産的な側面を受け持つ著作権のお話。

営利の多目的ホールを会場として非営利に開催されるコンクールにおいて、有効な著作権がある公表された著作物であるところの曲目を、著作権者からの特段の許諾を得ずに実演(演奏・合唱)することが違法でない事と、そのために当該曲目の譜面を複製し出演者に配布することがまず間違いなく違法である事は、何ら矛盾せずに両立します。

まずはここまでを理解してください。この時点でごっちゃになっているようでは話になりません。


電算機上で楽曲を再生するという行為は、望むと望まざるとにかかわらず、楽曲情報の複製ないし送信を伴う点において、話がややこしいのです。

仮にもえ的に流れてくるMIDIデータが「譜面情報」であると解された場合、これは楽譜の複製・送信に他ならず、言い逃れの余地はありません。現時点での判例・法解釈は九割九分九厘こちら側だったはずです。あなたはゲームクライアント上で“演奏”をしているつもりかもしれませんが、法的には楽譜をコピー機にかけて第三者にばらまいたのとほぼ同様の扱いになります。言うまでもありませんが、“演奏”前の .abc データはさらに確実に「譜面情報」であると解されることでしょう。繰り返します。言い逃れの余地はありません。

現実世界であれば当然のことを電算機上の仮想空間内でそっくり再現しただけのつもりでも、それが法的に許されるとは限りません。


・・・なので、以下に述べる一縷の望みは、出発点でもう既に可能性がほぼゼロなのですが、もしかしたら「通信方法がストリーミングである」あたりを強硬に主張することで、最後の一厘を引ける可能性が微塵程度はあるかもしれないので、いちおう思考実験ということで続けます。

仮にMIDIデータが「実演の記録」であると解された場合、ええとこういう場面でたとえ話は危ないのですが、コンクール会場で「演奏」しているのをラジオで放送した場合、ラジオの受信機は演奏ではなく「伝達」をしたことになる、のと同じ扱いになると予想されます。つまりあなたがゲームクライアント上で「演奏」を行った場合、あなたは同時に実演の記録をサーバーを経由して第三者に「公衆送信」する行為の主体である、と解されるような気がします。この文脈では運営側のサーバーは放送局の立ち位置です。演奏権と伝達権については非営利である限り適用除外ですが、公衆送信権はいけません。

MMO空間を構成するための情報伝達を、あたかも空気中を音波が伝搬するのと同程度に取り扱い、クライアント・サーバー間の通信を最初から「送信」として認めない・・・などというような論理の飛躍は、いくら裁判官がボケていても通らないと思います。あるいはMMO空間を仮想的な一つのコンクール会場、つまり「同一構内」と解することができるなら、大手を振って公衆送信権の適用除外に逃げることができますが、そのような気の利いた法解釈は実際にはたぶん通りません。

なおたまに読み違えている人がいますが、公衆送信権が非営利により適用除外になるのは、「(法的に定義されたるところの)放送」を「有線放送」ないし「対象を(本来の)放送対象地域に限った自動公衆送信」する場合のみに限定されています。平たく言えば難視聴対策のケーブル再送信の類をカバーするだけのもので、つまりもえ的な演奏には一切かかわりのない規定であって、これを援用できる見込みは全くありません。


最善の展開を想定したつもりでも公衆送信権から逃げられない時点で既に全く無意味なのだけど、演奏権の非営利による適用除外が営利MMO空間内で成立するかどうかについて。先の例示に当てはめると多目的ホール自体が営利であることに相当するわけで、私はそこは問題ないのではないかと予想します。現時点において入場自体は無償で可能ですし、仮に空間全体として営利であることが問題にされたとしても、それは演奏に対して支払われているわけではないと言い張れば何とかなるでしょう。強いていえば営利テーマパークの敷地内に併設されている無償の屋外ステージという程度の状況でしょうか。ただしこれは一般プレイヤーが自発的に演奏を行う場合の話で、運営側が絡んでいる場合には広告宣伝目的と解される恐れが出てきます。

他に非営利が崩れ得る余地というと演奏に対してゲーム内通貨のやりとりがあった場合ですが、これも資金決済法的な意味でゲーム内通貨は現金性と認められない程度なので、小学校の文化祭のこども銀行券程度には問題ないのではないかと予想します。しかしいずれにせよ、公衆送信権から逃げられる見込みがない時点でこの話は無意味です。


ここまで話を進めてから振り出しに戻りますが、ある著作物の特定の利用形態 (ここではゲーム内での楽曲の“演奏”行為) について、現行法の定めにおいて著作権者の権利が及んでいるか否かと、著作権者の意向として利用を認めているか否かは、別の問題です。ついでに言うならば、(著作権者ではなく) 著作者の意向として利用を認めたいと思っているか否かも、別の問題です。各個々人の信条として認められるべきであると考えるか否かなんてのはさらに別次元の話です。

著作権とは、著作物の財産的な取り扱いについて、法的に権利者の意向を反映するための機構であると同時に、もし権利者の度を超えた「我が儘」が文化発展の妨げとなるようなら、そうした無茶が言えないように権利を制限する機構でもあります。ですから、ある利用形態に対して、仮に著作権者の権利が及んでいないならば、たとえ著作権者の意向として利用を認めたくなかろうと、あるいは許諾に際し対価を要求しようと考えたとしても、それを強制する法的な根拠がないことになります。そして全く同様に、たとえ有効な著作権が及ぶ利用形態であっても、著作権者が当該権利の放棄あるいは行使の留保を表明している場合には、あるいは権利者からの許諾が得られているならば、そうした利用は全く合法的であって何らやましいものではありません。

しかしながら — ここまで長々と検討してきた通り、ゲーム内での楽曲の“演奏”という利用形態について、楽曲の著作権者はこれを任意に制限するに足るだけの法的な権利を有していると考えられます。そして何より重要なことは、こうした利用を特段の許諾なしに認めている著作権者は、少なくとも商業的にはごく少数派である、ということです。


以上の私の素人考えをまとめると、次のようになります。

ゲーム内での楽曲の“演奏”行為には、法の定めるところの「演奏」に該当しない行為が含まれており、楽曲の著作権者が持つ権利のうち、複製権あるいは公衆送信権の、少なくとも一方が及ぶと予想されます。故に、少なくとも「当該権利に基づき対価を要求する気満々な著作権管理団体のいずれか」に著作権管理が委託されている楽曲を、著作権者からの特段の許諾を得ずにゲーム内で演奏する行為は、法的に大変まずい可能性が高いと思われます。

これのどこが文化発展に寄与するんだか「わけがわからないよ」と言いたいのは山々ですが、悪法でも法は法であって、たとえば仮にそこに奇想天外な法解釈と粗悪な判例のオマケが付いたとしても、さらについでに肥え太る利権団体と族議員どもの陰が見え隠れしていたとしても、法は遵守するか改正するかの二択であって、黙って破るべきものではありません。


なお以上を踏まえた上で、鉄砲で人が死ぬから鉄砲をなくせというのと同じノリで、変換で阿呆が増えるから変換をなくせなどと「私に対して」要求する人に対しては、とりあえず全く同じ理屈によって「電気で人が痺れるから電気をなくしてみせろ」とだけ要求しておきます。

><

損得の程度がどーのこーのとかいう程度のご都合主義な理由付けであればご高説を賜るには及びません。その程度で私の気は変わりません。何がどうあっても「公開すべきでない」などという主張をしたいのであれば、せめてもう少し頑丈な理論武装をしてから出直してきてください。


とはいえ・・・現実の状況は確かにかなりアレであって、なんだか不安をかき立てられるというのも気分的にはわからんでもないのです。金の亡者どもの力を甘く見てはならぬ。もっともそうした事例のうちどれくらいが私の実装を使ったものなのか知らないんですが。変換系の実装は他にも色々あるらしいというのもあるけど、予想以上に手書きで戦い続けている人が多いような印象。・・・それとも手書きにすら及ばない程度の変換・・・いやまさかそんな・・・

ともあれそんなこんなで、いろいろと権利侵害の疑われる事例が増えているようです。くれぐれもご注意ください。