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蛇の足

「考えすぎ?」とか?つけとけば許されると思ったら大間違いですよ。まずは自分で調べ考えなさい。

(続き)

とはいえ元はといえば自分で蒔いた種なので、まあ一応説明しておきます。

商標権には必ず「指定商品」「指定役務」というものが設定されており、これによって商標権の及ぶ商品または役務の範囲が限定されています。であればこそ、造語でないただの固有人名であっても「商標」として登録できるのです。


たとえば仮に山田太郎氏が何か画期的な「鉛筆」を発明し、これを発売するに際し商品名を「山田」にしたとしましょう (この「山田」というのはあくまでたとえであって、実在あるいは非実在の山田鉛筆とは一切関係ありません)。この「山田」「鉛筆」についての商標登録が認められた時点で、山田太郎氏の許可なく「山田」の名の下に「鉛筆」を売ることは禁じられます。しかし「山田」の商標登録があるからと言って、日本全国にいる全ての山田何某がいきなり改名を迫られる訳ではありません。また同様に、山田太郎氏とは無関係な山田次郎氏が、「山田」の名の下に「消しゴム」を売り出したとしても、「消しゴム」が前述商標権の指定商品に含まれておらず、また鉛筆の「山田」のロゴマーク自体をまるっと模倣しているのでもない限りにおいては、いっこうに差し支えないと思われます。

実際に問題の社名は当地での固有人名(姓)であって、まあ日本での山田ほど多いかどうかは知りませんが、たとえ話としてはおおむね状況は正確なはずです。実際に登録されている「指定商品」の範囲を知りたければ特許電子図書館あたりで検索すればわかります。


そもそも本物のロゴタイプを使う方法なんてゲーム内にないわけで、単純に文字列として記述しているだけである以上、ただの固有人名そのものに商標権等が及ぶ可能性はないはずです。よって少なくともキャラクタ名自体には何ら問題ないと考えられます。

というわけで話の焦点は、商標登録上の「指定商品」と同種と思われる「仮想空間内でのアイテム」に商標権が及ぶかどうか、この一点に絞られます。ぶっちゃけますとこの点については全く自信がないのですが、実際のところどうなんでしょうね。少なくともこの状況下で実空間での実商品と「類似」していると受け取られる余地はさすがに無いだろうと思うんですが。もちろん実空間での実商品にあやかっているのは事実ですが、だからといって実空間の実商品そのものと誤認させるようなものではないですし。それとも人によっては誤認しちゃったりなんかするんでしょうか。


ごく大雑把に言えば、商標権という制度は「不幸な偶然の一致」をできるだけ許すように組み立てられています (もちろん私が行った件の命名は偶然の産物ではありませんが)。つまり商標を構成する要素(外観・呼称・観念)が多少かぶっていても、お互いに商標の使用が混同・誤認を招かない限りにおいては問題としない、というのが商標権のおおむね一般的な性質です。

これはどうしてかというと、商標が他の人に認識してもらうための目印となるものである以上、商標にはそれと特定するに足るだけの特徴が必要であると同時に、それが何であるかを想起させるような意味合いもまた同時に求められる場合が多いからです。いちいち新商品に人外の言語でにゃるらとほてぷとか無作為な名前を付けられてもわけがわからないでしょう。つまりあまり奇異に過ぎるのは商標としてはむしろ弱いのです。かといって固有名称であれ何らかの概念であれ、意味のある言葉から商標を採ろうとすればいずれ衝突が起きるのは避けられませんし、そもそも創作でない名称や概念などは誰か一人の手によって専有されるべきものではありません。こうした相容れない事情の妥協点を法的に定めているのが商標権ということになります。


指定商品・役務の区分には、コンピュータゲームのプログラムやデータなんていうのも当然ありまして、そういう向きで直接的に問題となりそうな指定が件の商標登録に含まれないことは確認しています。そして実空間上での有体物たる指定商品についての商標権がそのまま仮想空間内に及ぶとは、たぶん今のところ考えられていないのではないかと思います。自信がないなりにおそらく大丈夫だろうという程度には考えているのです。一応ね。だからってわざわざ危ない橋を渡らなくてもいいじゃんかと言われてしまうと返す言葉もないのですが、まあその。

なお商標等の使用については商標権自体とは別に不正競争防止法の定めがありますが、これはあくまで商標等の使用を手段として営業上の利益を得たり他者に損害を与えたりすることを問題とするもので、商標等の使用そのものをどうこうする規定ではないっぽいので、特段の不正な目的がなく何ら実害がない限りにおいては関係してこないような気がします。また先の消しゴム屋の例で言うと、「おまえはそもそも山田という名ではないだろう」という突っ込みはあるかと思いますが、ええと確かに無関係な第三者の固有名称を特段の承諾なしに商標登録することはできませんし、また逆に元々自身に帰属する氏名・名称を特段の不正な目的を持たずに使用した結果として起きた権利侵害については適用除外とする定めはあるのですが、そういった事情は「商標権が及んでいるか否か」「営業上の利益を侵害しているか否か」の判断に影響することではないので、はなから特段の権利侵害が無く単に表示として使っているだけのうちは山田が鈴木でも関係ないみたいです。なんだかややこしくてだんだん不安になってきますが、たぶんね。

今の状況をそのまま平行移動すると、公式が「ピザハット」について受けたライセンスってのが、商標法の定めるところの指定商品「ピザ」や指定役務「食品の提供」についての商標権に基づくものなのか、それともロゴデザインについての著作権や標章の使用についての不正競争防止法上のものなのか、ということに相当するのではないかと思うのですが、まあ常識的に考えれば民事契約上は法的に当該権利が及んでいるか否かにかかわらず許諾する旨が明文化してありそうな気がするので参考になるんだろうか。非常識に口約束で動いている可能性についてはここでは考慮しません、したくありません。


例によって無駄に長くなりましたが激しくいい加減に要約すると、小説等の創作の中で実在する会社名を使ったとしても、それだけで直ちに商標権の侵害とは見なされない・・・のと似たような状況なのではないかと思います。ここでもしDiarosがセカンドライフ的な意味で現実世界へのリンクを保っていたりしたなら、それはまた話がややこしくなったのかもという気はしますが。

いずれにせよ本当のところについては専門家にご相談ください。私は知らないよ。


ええとそれとは全く関係なく私事。はてなのアホーが無料プランに対する強制広告表示をはじめやがったので、今しばらくは無駄にだぶついているポイントを消費してダイアリープラスを維持しますが、ポイントが尽きたらこの日記自体をどこかに投げ捨てるかもしれません。

120802追記

一部にあからさまなポカがあったため加筆訂正しました。